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2017-08

カンボジア滞在記2008年7月 - 2011.03.05 Sat

2008年7月にカンボジアへ行ってきたときの滞在記。
NPO法人「カンボジアの子供の人権を守る会」が発行する
会報「オークン」に掲載されたものです。
まだブログを始めていなかった頃のものなので、
今回チャリティーコンサートを前にこちらにも載せました。

本当は今年も行きたいと思っていたのですが、
色々と諸事情が重なり断念することになり残念
今年は3人の子供たちが来日予定なので、心待ちにしています。

長文につき、お時間ありますときにどうぞ。

  <「希望の家」滞在記2008年7月>       

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朝7時、2時間の時差を引き算して、今頃子供たちは掃除を始めたかしら?と考えている自分がいます。「希望の家」の滞在は、帰国してからも尚、私のなかに何かを残してくれているようです。
  

6月に東京と千葉で行った2回のチャリティーコンサートで集まった皆さんのご好意33万円(約3000ドル)を手に、カンボンジア入りしたのは7月16日夜。17,18日は、アンコール遺跡観光にシュムリアップへ行ったので、「希望の家」の滞在は18日夜から本格的に始まりました。今回の私の大きな目的は、「希望の家」を中心にいくつかの施設でコンサートをすること。19日100名近い子供がいる「ダンプ孤児院」、20日午前「希望の家10周年記念パーティ」、夕方カトリック修道会「礼拝会」が経営する女子シェルターの方々を招いての演奏、そして22日カトリック修道会「マザー・テレサ 神の愛の宣教者会」の施設で訪問演奏、と計4コンサートを実施してきました。
  

5月に日本から船便で送った電子ピアノに、「希望の家」で無事再会できた時はホッ。故障も無く、これでコンサートの準備は万全です。クラシック3曲、日本の歌3曲、カンボジアの歌3曲、そして「希望の家」の子供たちが日本語で覚えてくれた「幸せなら手をたたこう」、約10曲が中心プログラムとなり、電子ピアノを「希望の家」のワゴン車に積んで施設を周りました。
  

行く先々で、カンボジアの現実を垣間見ることにもなりました。「ダンプ孤児院」は規模が大きく小さな子供が中心です。子供の服装や建物の様子から、この規模では生活の細部にまで、なかなか行き届きにくいのかもしれないと感じました。しかし、ごみ山が住処だったり、ストリートチルドレンだった彼らにとって、食事が用意され屋根のある所で寝ることができ、スタッフの世話を受けられることでどれだけ多くの安心感を得ていることでしょう。子供たちはみんな元気いっぱいで人懐っこく、コンサートのお礼にアップサラダンスを披露してくれました。


「希望の家」にいらしてくださった「礼拝会」のシェルターでは、日本人のシスター前田、そして看護士の諏訪恵子さんも働いています。ここには、レイプによって妊娠し子供と路上生活をしていた人、夫からのDVを逃れて来た女性など、問題を抱えている女性たちが生活しています。お酒、タバコ、ドラッグなどの問題も深刻で、そうした誘惑を断ち切ることができた人たちが入所しているそうです。女性本人に自立に加え、彼女たちの子供の教育の問題など、貧困が抱える根深い問題があるとのことでした。


中心部から少し離れた場所にある「神の愛の宣教者会」の施設には、HIV感染者(エイズ)、障害者、末期の病気を抱えた人々が入所しています。また、学びの遅れている子供たちを対象にした学校も敷地内にありました。このほかに町の中心部には、この会が経営している乳児院があり、「希望の家」の子供たちのなかには、そこから来た子もいます。広い敷地、清潔で明るい雰囲気の施設ですが、エイズで亡くなった母親の子供たちの将来、障害を持って生まれてきたということで親に捨てられた女性の行く先など、「病気」「障害」のケアだけでなく、それに付随する多くの問題があるとのことでした。ここにはシスターリリィという日本で13年活動していた日本語が堪能なシスターがいらして、施設内を案内してくださいました。


どこのコンサートでも、カンボジアの歌が大人気。ナレットさんが、「希望の家」の子供が通う学校の先生に頼んで、カンボジアの歌の楽譜を書いてもらってくれました。メールで事前に送ってくれていたのですが、これが大助り!どこでも皆さん大盛り上がりでした。ヨーロッパ、18世紀・・・と説明しても、馴染みが薄く生まれて初めて聴くクラシックに関しては、シスター前田が「理解できなくても、彼らの経験として残ると思うのですよ」と言ってくださった言葉を信じたいと思います。我が日本男性陣ががんばって歌ってくれた千昌夫の「北国の春」、村上さんが美しいソプラノを披露してくださった「ふるさと」、日本の歌は彼らの耳にどう響いたでしょうか。

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「希望の家」での生活は、コツをつかむのに2日ほどかかりましたが、慣れてしまうと快適でした。行く前に東南アジアがいかに日本と違うか(大抵マイナスの話でしたが)聞いていた私は、正直怖気づいていたのです。特に日常生活に関する部分で(食事・トイレ・お風呂・虫など)相当なストレスを予想していました。まず到着するまでに、旅の達人ばかりが揃った皆さんが色々と教えてくださり、思ったほどではないかも、と思えるようになりました。蛤谷さんは中国の少数民族の所へ旅されたことがあり、扉無しボットン便所も経験済みで、「東南アジアは扉もあるし、水洗で衛生的よ」と、明るいアドヴァイス?!をくださいました。そうそう、行けばなんとかなるさ!そして、「希望の家」では1度もお腹も壊さず、虫も蚊取り線香を炊けばそれほどでもなく、トイレも手動ですが水で全体を流せるのでいつも綺麗に保たれていました。お風呂は水のみだったのですが、暑い国ではまぁ許容です。

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食事はチョンペイさんが作ってくれる家庭料理が、ナンプラー好きの私の口に合い、質素ですが胃に負担が少なく大変助かりました。菊地先生が振舞ってくださった2回の日本食(日本のカレー、とんかつ)も有難かったです。また「冷蔵庫」がないので冷たい飲み物を口にすることがなかったことも、返ってお腹の調子を保ってくれていたのだと思います。日本に帰ってから、暑さに負けてビールや冷たい飲み物を口にすることや、冷房の効いた場所と外気との温度差は、体に大きな負担をかけているのがよくわかりました。雨季といっても日本の梅雨とは違い、午後から夕方にかけて短時間のスコールが降るほかは、ジリジリと太陽が照り付けています。汗で1日に2~3回は着替えていた洗濯物も、問題なく乾きました。物が少ないと思い込んでいたカンボジアでしたが、お金さえ出せば何でもそろいます。私も滞在中、生活に必要なものを買い足しました。
  

「希望の家」の朝は5時頃から始動します。まず毎日掃除から。そして1日に3度ほど子供たちは水を浴びるので、着替えもよくして清潔にしています。3度の食事が決められた時間にあり、こうした基本的な生活の積み重ねが、子供たちの安定した表情を生んでいるのがよくわかりました。「希望の家」の子供たちは、とても親切で気が利くのです。言葉がうまく伝わらなくても、なんとかこちらの要求を満たそうと努力してくれる。よく働き、よく学ぶ、これが私の子供たちの大きな印象でした。12人の共同生活は、良いことばかりではないかもしれませんが、協力すること、上の子は小さな子をケアすること、助け合うこと、が自然と身についています。自分だけが得をする、いい思いをする、という発想は彼らにはない様子。自らを振り返り、反省しかりです。こうした気持ちの良い気が漂っているので、私は滞在中1度もイライラすることがありませんでした。
  

「希望の家」の子供たちはそれぞれ個性的で魅力的。まずは女性陣の印象を。英語と日本語が他の子より断然わかるサムアイはムードメーカーであり、私たちのお世話を率先してやってくれたリーダー的存在です。将来は日本語の通訳か翻訳家になるのが夢だそう。サブーンは女の子らしい気遣いがあり、台所仕事などよく手伝っています。学校のお友達がよく遊びにきていました。シナイは、シャイで大人しい女の子。将来、NGOなどで子供に関わる仕事がしたいそうです。スライロワは、すらっと背が高く大人っぽい子ですが、表情はちょっと寂しげ。自分を表に出すのは得意でないようですが、菊地先生によくなついていました。ティアリ、ティアラは双子の姉妹。ティアリの口元のほくろが2人の見分けのポイントです。2人とも人懐っこくおしゃれさん。客室乗務員が夢だそうです。チャリアは、美少女でオシャレにも相当こだわっている様子。ダンスも上手で、お勉強もクラスで1番だそうです。その妹のレッケナもお姉ちゃんに負けないおしゃれな美少女ちゃん。最年少の彼女は、体もひときわ小さいのですが、朝食にゆで卵1個で3杯のご飯を食べる育ち盛りです。


男の子たちは女性陣のパワーに押され気味ではありますが、みんな気持ちのいい子。ウドムは端正な顔立ちで、パーティの時には女の子のクラスメイトも何人か連れてきていました。きっとモテるのだろうなぁ。キーアは愛嬌のある面白い子。電気配線が得意で、楽器をスピーカーにつないでくれたり、コンサートのサポートをたくさんしてくれました。将来は機械のエンジニアの仕事をしたいそうです。ムーンは、いつも爽やかな笑顔でいてくれる気持ちの優しい男の子です。パーティのダンス大会では上手なステップを披露し、私にも教えてくれました。そして、ほとんど関われなかったロッタナ。帰ってこない日もある彼は、外の世界の誘惑と思春期の揺れ動く思いをなかなか消化できずにいるようです。他の子供たちの端のほうに遠慮気味に、そしてちょっとバツが悪そうにしていました。

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 「希望の家」ではお客さんには慣れている様子で、私たちが居ても自分たちの生活のペースを保ちつつ、歓迎してくれているように思いました。近所の子供がしょっちゅう遊びに来て、午後からは大人の男たちのバレーボール大会となり、スコールが降れば雨宿りの場所になります。夕方からは地域の子供たちも集まっての無料の英語教室と日本語教室。犬が3匹、猫2匹、時々野良犬までも混じって、多くの人(&動物)が出入りをし、遊んだり学んだり・・・こういう光景は、日本ではお目にかかれなくなったなぁ。
 

私は日本でピアノを通して「教育」の端っこにいますが、今回の滞在で、「希望の家」の子供たちの学ぶ意欲、働く力には心底恐れ入りました。客観的に見れば、日本の方があらゆる面で明らかに恵まれています。選択肢が多く、与えられているものは計り知れません。しかし、その一方で落としてしまっているものもあるのではないか?「希望の家」の子供は、元の場所にいれば家の労働力になり学校へ通えない境遇です。「希望の家」に来たことで、衛生的な生活、食事、教育が受けられ、大学の道も開かれるのです。彼らはそのことを感謝して受け入れ、ここでの生活が自分の人生を広げてくれることをどこかでよく理解しているのでしょう。だから真っすぐで、学ぶことに貪欲です。日本はどうでしょうか?選択肢が2~3個であれば、よいチョイスができるかもしれません。でも今の日本は何でも手に入り、気を紛らわせられるものに溢れ、選択肢も増えすぎました。これがダメならアレもある、アレがダメならコレもいいかな、いやいやアレでもいいかもしれない、迷うことに疲れたら気晴らししようか・・・こうした必要以上の思考回路に慣れきってしまい、私たちは何に対しても気持ちが薄くなってしまったのではないだろうか?無駄なエネルギーを注いでいる部分が多くないだろうか?そう思うと、自由であること、何もかも揃い与えられていること、選択肢が広がることが、単純に「いいこと」なのか、と考えてしまいました。これからカンボジアも発展していくでしょう。もちろん「希望の家」の子供たちには、開かれた自由な選択が可能な豊かな国で、生き生きと自分の道を進んでほしい。でもそれと同時に、「自分の生き方を選択する確かな目」も育んでほしいと願わずにはいられません。そしてそれは、今の私に返ってくる言葉でもあります。
  
短い滞在でのカンボジアのほんの一部を見聞きした旅でしたが、カンボジアが抱える問題のひとつ「貧困」から抜け出すには「教育」が必要と、今回改めて強く感じました。松永さんは「基本的な子供の人権は“衣食住”が足りるだけでなく“教育”も加わること」とおっしゃっていました。子供たちの「教育」がカンボジアの将来を変え、松永さんの願う「世の中に役立つ」人材が育っていくことに繋がるのだと思います。
  7日間、教えられることの多い旅でした。このような機会を与えてくださった菊地先生、松永さん、八旗さん、村上さん、蛤谷さんご夫妻、そして「希望の家」のナレットさんはじめスタッフのみなさん、子供たち、この旅で出会った全ての人々に感謝します。ありがとうございました。がんばれ!「希望の家」の子供たち!!

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プロフィール

高木早苗  Sanae Takagi

高木早苗 Sanae Takagi
都立芸術高校を経て、東京藝術大学卒業、ミュンヘン音楽大学大学院マイスタークラス修了。現在、都立総合芸術高校音楽科講師。
参考サイト:
ピティナ演奏者紹介
YouTube Sanaetakagiklavier
Instagram@sanaeklavier

★TACT Piano Master Class ★

予定:7/29、9/3、10/1、11/12、12/3 会場:スタジオ1619・西武線 新桜台駅徒歩1分☆クラス概要問い合わせ

生徒勉強会

2017年7月24日(月)

希望の家チャリティーコンサートVol.10

2017年9月16日(土)千葉・印西

いんば学舎草深ホール

共演:尾形祐香(Pf)

第21回「新しい耳」音楽祭第一夜

2017年11月3日(金・祝)午後4時〜サロンテッセラ(東京・三軒茶屋)

共演:相川麻里子(Vn)、重松希巳江(Cl)、植木昭雄(Vc)

メシアン「世の終わりのための四重奏曲」他 詳細後日

ピティナステップアドヴァイザー&トークコンサート

2017年12月10日(日)

スピカコミュニティプラザ 多目的ホール(茨城県筑西市)

筑西ステーション

ピティナステップアドヴァイザー

2017年12月26日(火)

台東区ミレニアムホール

上野ポリフォニーステーション

生徒勉強会

2018年1月26日(金)18時〜

Instagram

生徒勉強会 終了

2017年7月18日(火)16時〜

日比谷・松尾ホール

出張レッスン 終了

2017年6月17日(土)群馬

PTNA課題曲アドヴァイスレッスン 終了

2017年6月4日(日)チラシ

スタジオ1619- 西武線 新桜台/全日本ピアノ指導者協会・千代田支部

生徒発表会 終了

2017年6月3日(土)

保谷こもれびホール(西東京市)

ピティナステップアドヴァイザー&トークコンサート 終了

2017年5月28日(日)南城市文化センターシュガーホール(沖縄)

沖縄首里ステーション

出張レッス 終了

2017年5月13(土)、14日(日)鳥取・倉吉

ピティナステップアドヴァイザー&トークコンサート 終了

2017年2月19日(日)柏崎市文化会館アルフォーレ大ホール(新潟)

かしわざきステーション

東京佼成ウィンドオーケストラ定期演奏会 終了

2017年1月28日(日)東京芸術劇場

オケ中・チェレスタ

レスピーギ「ローマの松」

生徒新春勉強会 終了

2017年1月6日(金)

松尾ホール

2016年審査実績

2/6・13日本バッハコンクール全国大会、8/4・5ピティナG級二次、10/10日本クラシック音楽コンクール本選、11/27ショパンコンクールinアジア東京予選、12/19日本クラシック音楽コンクール全国大会

ピティナステップ主催 終了

2016年12月26日(月)台東区ミレニアムホール(東京)

上野ポリフォニーステーション

リサイタル 終了

2016年11月18日(金)19時〜

東京オペラシティ・リサイタルホール(初台)

リサイタル2016詳細

演奏会「小林仁 ピアノの世界」 終了

2016年10月22日(土)17時〜

洗足学園音大シルバーマウンテン1 F

チャイコフスキー「交響曲第5番より第4楽章」(2台8手)他 詳細後日

希望の家チャリティーコンサートVol.9 終了

2016年9月17日(土)14時〜

Vn:相川麻里子

いんば学舎・草深ホール(千葉・印西市)

リングラツィオライブ 終了

2016年9月10日(土)19時30分〜

Vn:相川麻里子

リングラツィオ(東京・江古田)

生徒勉強会 終了

2016年7月28日(木)午後2時〜5時30分

日比谷・松尾ホール

2016年ピティナ課題曲アドヴァイスレッスン  終了

2016年6月19日(日)

ピティナ千代田支部 ptna-tact@tact-fd.com

出張レッスン 終了

2016年6月12日(日)高崎(群馬)

生徒勉強会 終了

2016年6月5日(日)午後6時〜9時

大泉学園・ゆめりあホール

ピティナステップアドヴァイザー&トークコンサート 終了

2016年5月28日(土)

保谷こもれびホール・メインホール(東京・西東京市)西東京地区ステップ詳細

西東京パサパステーション

出張レッスン 終了

2016年5月14日(土)15日(日)

鳥取(倉吉市)

ピティナ新曲二次・実演審査 終了

2016年4月21日(木)

群馬交響楽団定期演奏会 終了

2016年3月19、20日群馬音楽センター/すみだトリフォニーホール

メシアン:トゥーランガリラ交響曲

オケ中・ジュドタンブル

リングラツィオコンサート 終了

2016年1月30日(土)19時30分〜

ピアノライブ

江古田(東京)

紅茶の樹コンサート 終了

2016年1月17日(日)15時〜

相川麻里子ヴァイオリンコンサート

善行(神奈川)

生徒勉強会 終了

2016年1月4日(月)午後3時〜6時30分

日比谷・松尾ホール

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